|
「和裁士」――それは、日本の各地で染め織られた反物を、一人ひとりのお客さまの体形や好みに合わせ、一枚のきものに縫い上げるプロフェッショナルに与えられる呼称です。社団法人日本和裁士会が商標登録しており、その会員のみが使用できるものとされています。近年、この呼称が当会に所属する会員以外でも使用されることが増えました。それは和裁士そのものが社会的に認知されてきていることの一つの証左ではありますが、本来は当会会員を表す呼称であることを、まずは申し上げておきたく思います。
当会は1953年(昭和28年)の創立以降、「和裁士」の社会的地位の向上、後継技術者の育成、きもの・和裁の振興を目指し、活動してきました。“和裁技術の日本一”を決める競技会「全国和裁技術コンクール」、高校生以上の学生を対象にきもの作品を公募する「きもの作品コンテスト」、和裁技術の向上を図るとともに、そのベースとなる日本文化やきもの文化への造詣を深める「全国和裁研修会」、プロ和裁士を認定する「職業和裁技能検定」などを毎年、実施しています。「和裁士」の価値をさらに高め、きものを楽しむ人たちに貢献していくため、近年は「縫って、着て、着せられる和裁士」をスローガンに独自の着装資格制度も整備し、着やすく着崩れしにくい着方の習得・指導にも力を入れています。また、中学校における和装教育、地域社会へのきもの振興にも各地の会員が積極的に参加するなど、活躍の場を広げています。
この間、時代は大きく変化し、きものの市場規模は激しく縮小しました。また和裁分野においては、中国やベトナムにおける海外縫製が増加し、国内の「和裁士」に多大な影響を与えています。しかし縮小の一方で、市場のニーズは多様化・個性化し、新品の仕立てはもちろんのこと、仕立て替えやリフォーム・リメークなどの再生も含め、より専門的で感性豊かな対応が求められてもいます。きものには多様な楽しみ方があり、それを支える多様な技術や知恵がある。このような多様なニーズに対応しながら、専門技術や知識、創意工夫を蓄積し継承してきたのが国内の「和裁士」であり、その「和裁士」のネットワークが日本和裁士会と言えます。
きものの仕立てを軸として、「きものを着て楽しむ」という豊かな文化を支え、未来に継承していく――私たち「和裁士」は、今日も一針一針に心を込めて、皆様のきものを縫い続けています。
|